ミード

G. H. ミード
George Herbert Mead, 1863-1931

[伝記]
ミードはアメリカの心理学者、哲学者。哲学においては、プラグマティズムの系譜の一人に数えられる。心理学においては「社会的行動主義」をとなえたほか、コミュニケーション論や自我論における功績が目立ち、社会心理学や社会学の領域において広く知られており、1980年代になって、現象学的社会学、構造主義、フランクフルト学派(アクセル・ホネットなど)から再び注目を浴びており、それは「ミード・ルネッサンス」とよばれているほどである。

ミードは1863年2月27日、マサチューセッツ州サウスハドリーで生まれた。1879年にオバーリン大学入学。大学は古典教育が主だったため、ギリシア語とラテン語に長け、晩年まで古典に親しんだ。1883年に卒業後は、家庭教師や測量の仕事などをしたのち、1887年、ハーバード大学に編入し、ウィリアム・ジェイムズの講義を受ける。1888年に卒業。また同年から91年にかけて、ドイツのライプチヒ大学・ベルリン大学に留学する。その後、ミードは当時デューイが在籍していたミシガン大学の哲学および心理学講師として迎えられることになる。94年にはデューイとともにシカゴ大学に移り、また1931年からは、これもまたデューイとともにコロンビア大学に移る予定だったが、その年に亡くなった。ミードとデューイは生涯にわたって親交をかわし、互いに研究に励んだ。また、デューイに影響を与えたとみられるミードだが、デューイの影響はミードには見られないということがよくいわれている。影響関係にかんしてはむしろデューイよりも、ホワイトヘッドやベルクソン、ジェイムズの強い影響を受けているようだ。しかしデューイの思想を高く評価していることは間違いなく、デューイの哲学に関する論文が多く著されている。他方で、ミードは生涯において、一冊の本も書かなかった。現在刊行されている著作は、彼の学生たちが未発表の草稿と講義のノートをもとに形成されたものである。

[概要]

[年表]
1863 マサチューセッツ州サウスハドリーで生まれる。
1879 オバーリン大学入学。
1883 卒業。
1887 ハーバード大学に編入し、ウィリアム・ジェイムズの講義を受ける。
1888 卒業。その後ドイツのライプチヒ大学・ベルリン大学に留学。
1891 帰国。デューイが在籍していたミシガン大学の哲学および心理学講師になる。
1894 シカゴ大学助教授。
1931 死去。68歳。
1936 『19世紀の思想のうごき』
1938 『行為の哲学』
1964 『G.H.ミード選集』
1982 『個人と社会的自我』

[主要著作]
・The Philosophy of the Present, Open Court Publishing, 1932.
・Mind, Self, and Society, Ed. by Charles W. Morris., University of Chicago Press, 1934.
・Movements of Thought in the Nineteenth Century, Ed. by C. W. Morris. University of Chicago Press, 1936.
・The Philosophy of the Act. Ed. by C.W. Morris et al, University of Chicago Press, 1938.
・Selected Writings, Ed. by A. J. Reck, University of Chicago Press, 1964.
・The Individual and the Social Self: Unpublished Essays, Ed. by David L. Miller, University of Chicago Press, 1982.
・Essays in Social Psychology, Ed. by M. J. Deegan, Transaction Books, 2001.
・G.H. Mead. A Reader, Ed. by F.C. Silva. Routledge, 2011.

邦訳
・『精神・自我・社会』稲葉三千男・滝沢正樹・中野収訳、青木書店, 1973年。
・『精神・自我・社会』河村望訳、人間の科学社, 1995年。
・『19世紀の思想動向(上)』河村望・近藤敏夫監訳、いなほ書房, 1992年。
・『19世紀の思想動向(下)』河村望監訳、いなほ書房, 1994年。
・『西洋近代思想史――19世紀の思想のうごき(上・下)』魚津郁夫・小柳正弘訳、講談社学術文庫, 1990年。
・『現在の哲学・過去の本性』河村望訳、人間の科学新社, 2001年。
・『社会心理学講義・社会的自我』河村望訳、人間の科学新社, 2001年。
・『社会心理学講義 個人と社会的自我』小川英司・近藤敏夫訳、いなほ書房, 1990年。
・『社会的自我』船津衛・ 徳川直人編訳、恒星社厚生閣, 1991年。
・『プラグマティズムの展開』加藤一己・宝月誠編訳、ミネルヴァ書房, 2003年。

[関連文献]
・A. ホネット『正義の他者―実践哲学論集』加藤泰史他訳、法政大学出版、2005年。
・――――、『承認をめぐる闘争』山本啓訳, 直江清隆訳、法政大学出版、2014年。
・鶴見俊輔『アメリカ哲学』、講談社学術文庫、1986年。
・魚津郁夫『プラグマティズムの思想』、筑摩書房、2006年。
・伊藤邦武『プラグマティズム入門』ちくま新書、2016年。
・『現代思想―いまなぜプラグマティズムか』青土社、2015年。

[ウェブサイト]
・アメリカ哲学フォーラム
http://www.lit.kobe-u.ac.jp/apforum/
・日本デューイ学会
http://johndewey.web.fc2.com/

(本ページのコンテンツは、本ウェブサイトの管理者の主宰する英米哲学研究会で作成したものです。特に本ページの作成に際しては堀越耀介さんに協力して頂いています。)

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